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筑後川昇開橋(福岡県)
大鳴門橋(兵庫県)
 

九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門 准教授 笹岡 孝司 様

広報

課題を解決し社会貢献に繋げる為には、研究開発や技術審査の成果等を下水道関係者をはじめ社会へ普及していくことが重要です。

九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門
 准教授 笹岡 孝司(ささおか たかし)

第1回:自己紹介
 九州大学の笹岡です。
 所属名の「地球資源」とあるように、これまで資源開発における岩盤工学の諸問題を対象とした実用的な研究に取り組んできましたが、国内資源産業の斜陽化に伴い、 これまでの研究を基礎として海外への展開、言い換えますと海外の研究機関、大学、企業との共同研究をはじめ、都市ライフラインの開発やそれに伴う環境問題などに研究対象を広げています。
 特に、都市部では地表が構造物で占有されているために,地表に新たなインフラ設備を設けることは難く,インフラ設備を地下に敷設する必要があります。
 そこで、交通渋滞等の問題を引き起こさず、周辺への騒音や振動等の被害が少ない工法として多用されている推進工法の施工に関する研究を行っています。
第2回:ラグビーから学んだこと
 私は高校時代だけですが、ラグビー部に所属していました(ちなみに、小・中学校がサッカー部所属でしたが……)。
 ラグビーは社会に出ても役に立つ教訓が多く含まれているスポーツの一つだと思います。
 ①努力して粘り強く取り組む力、
 ②組織プレー、
 ③献身、
 ④分業制(仲間を信じる)。
 その中で①について少しお話ししたいと思います。
 私の所属していた高校は入部当時弱小チームで、入部後の初戦では0:114(当時、1トライ=4点でしたが……)の屈辱的な敗戦を経験しました。
 部員全員でチームの立て直しについて話し合った結果、体力&パワーと基礎に立ち返ってフィジカルを徹底的に鍛えることで、部員の少ないチームながらケガも少なく勝てるようになったのを覚えています。
 「運を味方にして、勝った方が強い」のではなく、「強いものは勝ち続ける」世界であること、そして小手先の技に頼らない、真っ向勝負できる実力をつける大切さを学んだように思います。
 とはいえ、息子も少年ラグビー部に入って楽しんでいますが、コンタクトプレーで痛んでいる姿を見ると親としてつらいものがあります……。
第3回:推進工法の未来について
 推進工法は、シールド工法との融合等、互いの特徴を活かした施工も行われ、また、3,000mm以上の超大口径推進管の開発により大断面での適用も拡大されています。
 さらに、下水道分野においては、老朽化や損傷した管きょを撤去しながら新しい管に置換える改築推進など維持管理時代に対応した技術も誕生しています。
 推進工法は、重要構造物が埋設されている都市部での採用が多く、今後さらなる超大断面化、長距離化および急曲線化が予想されます。
 推進工法がさらなる脚光を浴びるためには、理論体系を検討する際に役立つ実績経験のノウハウの蓄積分析が必要であり、システムとしての理論の確立、確立した理論の実施工での活用、不測の事態を回避する探査技術の向上等、安全品質向上に向けたさらなる技術革新が必要だと考えます。
 これにより、非開削技術として都市部の建設公害を抑制できる「推進工法」に対し、今後ますます大きな期待が寄せられるのではないかと考えています。
第4回:わが国の推進技術の海外展開について
 国外に目を向けると、東アジア・東南アジアの経済発展に伴い、これらの地域ではインフラ整備が積極的に行われており、日本の高度成長期のように力業で管路を埋設するという概念が主流になっています。
 このため推進工法の国内需要以外にもこれらの地域への技術展開も必要であると考えます。
 私が所属する研究室では、これまで推進工法の施工に関する研究を中心に活動してきているため、これらの地域の発展は魅力的にも脅威にも感じています。
 わが国においても、これまで模倣から始まった技術が世界に発信するまでの技術力を培ってきました。
 今後これらの地域においても、模倣から始まった技術が長年実績を積み重ねれば、わが国同様、それは模倣ではなく当該国の技術になると思います。
 わが国は経済規模が今後大幅に減少の一途を辿ると推測されています。
 巨大な経済大国に対するコンセンサスの維持に向けては、推進工法の核心的技術の保護をはじめ、わが国が積極的に展開しようとしている埋設管の修復技術、環境に配慮したインフラ整備技術、高精度測量機器等のさらなる発展促進が「活路を切り開いていく鍵」になると考えます。
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