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筑後川昇開橋(福岡県)
大鳴門橋(兵庫県)
 

長岡技術科学大学大学院 技術科学イノベーション専攻 兼 環境社会基盤工学専攻 教授 姫野 修司 様

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課題を解決し社会貢献に繋げる為には、研究開発や技術審査の成果等を下水道関係者をはじめ社会へ普及していくことが重要です。

長岡技術科学大学大学院 技術科学イノベーション専攻 兼 環境社会基盤工学専攻
 教授 姫野 修司(ひめの しゅうじ)

第1回:長岡技術科学大学 資源エネルギー循環研究室
 長岡技術科学大学 資源エネルギー循環研究室の姫野修司です。
 下水道分野の資源とエネルギーの循環をテーマに研究しています。私が、「資源・エネルギー循環研究室」を命名した際に、既に資源循環という言葉は一般的でしたが、エネルギー循環という言葉はあまり使用されていませんでした。
 下水道分野は豊富なバイオマスを核にエネルギーを循環させる必要があるとの思いから資源・エネルギー循環研究室と名付けました。老朽化対策や下水処理場の再構築など下水道は課題山積ですが、下水道事業はエネルギー消費の多い分野なので脱炭素化に向け、難しい課題であるエネルギー循環は今後ますます重要になると感じています。
第2回:バイオガスと二酸化炭素の魅力
 博士論文が大気環境の分野だったこともあり、長岡技術科学大学に着任して、改めて汚泥の嫌気性消化(メタン発酵)を詳しく再勉強しました。
 汚泥の減容化の必要性は言うまでもありませんが、当時は発酵工程で発生するバイオガスは一部の大都市を除き、余剰ガス燃焼設備で焼却処理されていたことや、バイオガスには40%ものCO2が含まれているにもかかわらず、それらを回収、有効利用しない事が不思議でした。当時はカーボンネガティブやカーボンマイナスという言葉もなく、カーボンニュートラルであるバイオガス中のCO2をリサイクルすることは、CO2を出さないどころか、減らす事ができる究極のリサイクルだと思い、研究テーマとして取り組みました。
 土木研究所と共同で小型、安価なバイオガス発電機の開発やバイオガスからCO2を分離する膜の開発を実施しました。CO2の分離、利用に関しては、まだこれからの技術ですが、未来から現在を見たときに必ず必要と思う技術に取り組みたいと思います
第3回:合流式下水道の改善技術とパソコンのリカバリー
 パソコンを使って調子が悪くなりPCを再設定する作業はできれば避けたいと思う人が多いと思います。私はPCの再設定が好きです。設定の途中の嫌な事よりも、同じPCなのに見違えるように早く動作した嬉しさの方が大きいです。
 着任して早々に合流改善のテーマに取り組みました。長岡市の協力で合流管渠内にサンプラー、下水処理場内にボルテックスセパレーターを設置し、当時出始めた流出解析ソフト「MOUSE」を用いて汚濁負荷量の推定と改善案の検討に取り組みました。いっそのこと、分流化が進められれば対策としては単純ですが、時間的にも経済的にも許されそうにありません。既存システムをうまく使いながら、今まで以上の効果を発現させ、分流式以下の汚濁負荷となるように悪戦苦闘していることもあり、何度もシステムを再構築で、その度に新品のように稼働するPCが羨ましく感じられるのでしょう。
第4回:嫌なものから目を背けない
 下水処理場の消化槽に余裕があることを良い事に、世間で困っている生ごみや稲わらなどを下水汚泥と一緒に発酵させるとバイオガスが簡単に増産できます。増えたバイオガスで発電すれば一石二鳥ですが、生ごみの分別や収集、稲わらの回収、さらには汚泥の有効利用などの課題も生まれます。
 生ごみはディスポーザーを介して管路収集の可能性もあります。稲わらは下水汚泥の肥料化が進めば、農業分野との相互乗り入れの重要な接点になります。しかし、下水道に詳しくなればこのような技術は色々な問題を引き起こす可能性が透けて見えるので、反対したくなります。
 元の上司である藤田昌一先生からは、荘子の「江河は小を合して大を為す」の言葉に準えて下水道は世間から嫌われる生ごみやし尿や稲わらなどあらゆるバイオマスを包容する現代の都市インフラの大河となるよう取り組みなさいと諭されました。紙おむつも何とかしたいものです
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