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公益財団法人 東京都環境公社 東京都環境科学研究所 環境資源・生物多様性研究科 研究員 落合 知 様

下水道機構とは

産・学・官の力を結集し、揺るがぬ連携のもとで技術の進展と普及を目指す「技術の橋わたし」です。

公益財団法人 東京都環境公社 東京都環境科学研究所 環境資源・生物多様性研究科
研究員 落合 知(おちあい さとる)

第1回:自己紹介~「官」と「学」の経験
 東京都環境科学研究所で研究員をしております、落合知です。
 私は大学博士課程を修了後、地方公務員として河川整備の仕事に就き、その後、縁あって国立研究開発法人で研究員、北海道大学で教員、そして現在の公益財団法人 東京都環境公社 東京都環境科学研究所に勤めることとなりました。そして、現在も北海道大学の招へい教員をさせていただき、「官」と「学」を行ったり来たりしています。
 私の研究テーマは色々とありますが、メインはバイオマス資源の利活用・資源循環です。もちろん下水汚泥も研究対象でして、処理・利活用として堆肥化やメタン発酵の実験と社会システム分析を行っています。
第2回:バイオマスは扱いづらい?
 生ごみや下水汚泥のようなウエット(水分の多い)なバイオマスを研究対象としてきました。なぜか? それは、「みんな嫌がるから」です。幸い私はあまり気にしない体質だったので、今でも研究していられるのかもしれません。
 最近、「バイオマス資源」という言葉がもてはやされ、樹木などの木質系バイオマスは直接燃焼やガス化など、さまざまな方法で利用・実用化されてきています。一方で、まだまだ手付かずのものが多いのが、ウエットなバイオマスです。みなさん想像の通り、ウエットなバイオマスは腐敗したり、周囲を汚したり、熱量が低い、分散して排出されるなど、なにかと扱いづらいものなので、まだ手付かずのまま我々の周りに眠っているのです。
第3回:資源循環と脱炭素
 2015年のパリ協定から世界は脱炭素に向かっています。日本も世界と足並みを揃えて2050年までにカーボンニュートラルを目指すとしています。一方、資源循環は循環経済(サーキュラーエコノミー)という言葉で社会に浸透しようとしているところです。簡単に言うと、資源や製品を一方通行で廃棄するのではなく、循環利用し付加価値をつけた形で持続的に使う、そんな社会にしていこうというものです。
 下水汚泥はこれまで、焼却減容化される場合が多かったのですが、焼却の前に堆肥化やメタン発酵などの技術を使って、肥料やエネルギーといった形で有効利用しよう、という試みが増えています。とてもいいことですね。資源循環のための技術開発・導入は素晴らしいことですが、その際に「社会システム全体で見たときに、その技術は本当に環境(脱炭素だけではなく)に良いのか?」と、俯瞰した目でとらえ、評価することも大事なことだと思います。
第4回:バイオマス資源と合意形成
 まだまだ手付かずのバイオマス資源が世の中にはたくさんあります。すぐにでも使いたいですよね? でも慌てないでください。バイオマス資源の利活用事業を行うには、関係者への「合意形成」が重要になります。
 関係者とは、バイオマス資源の「生産者(排出者)」、「収集運搬者」、「処理・利活用施設」、「最終物の利用者(残渣受入者)」などです。これら関係者ときちんと合意をとらなければ、「あれ?バイオマスが集まらない」、「残渣の山ができてどうしよう」といった、バイオマスの流れの滞りが起きてしまいます。もしバイオマス資源がある商品の生産過程で生まれるものだった場合、バイオマス利活用の流れが滞ることで、商品の生産ができなくなる事態になります。
 そうです、バイオマス資源は多くの人たちの合意で成り立っている、ということを忘れないでください。
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