日本大学工学部土木工学科
教授 中野 和典(なかの かずのり)様
- 第1回:自己紹介
- はじめまして、日本大学工学部土木工学科の中野です。
バブル世代といえる私が筑波大学の学生だった頃はバイオテクノロジーブームの時代であり、微生物による有用物質生産の効率化が学位論文のテーマでした。
その後、バブルの崩壊とともにブームは去り、環境問題がクローズアップされるようになり、筑波大学の助手時代には微生物工学的な手法で富栄養化湖沼の水質改善の研究に取り組みました。このようにして研究分野が生物工学系から 環境工学系へと変わり、前職の東北大学と現職の日本大学では、自然の浄化機能を工学的に強化した人工湿地を主な研究テーマにしています。 - 第2回:ロハス工学とは?
- 私が所属している日本大学工学部では、ロハス(Lifestyles of Health and Sustainabilityの略語)を実現する工学であるロハス工学をスローガンとしています。
ロハス工学を具現化した「ロハスの家」では、災害によるライフラインの寸断やエネルギー危機に影響されず、上水道に頼ることなく生活用水を確保し、排水で環境を汚染することもない自立共生の住環境を提供する家の実現を目指してきました。
災害が頻発しているわが国では、急激な人口減少が進んでいる地方を中心に、「ロハスの家」のような自立可能でレジリエントなインフラの重要性が増していると言えるのではないでしょうか。 - 第3回:私の夢PartⅠ ロハスの花壇の社会実装
- 生活に必要なエネルギーと水の自給自足を目指した「ロハスの家」では、雨水の屋根集水だけでは足りない生活用水を再生水で補充する方針とし、エネルギー自給の足枷とならない省エネルギーな水再生方法として人工湿地法を採用し、ロハスの花壇を構築しました。
ロハスの花壇は、一般家庭の庭で水の再生を行うことを想定して花壇を模してデザインした人工湿地です。この花壇では、生活廃水が、植物を育てる水であり、肥料であり、暑夏には植物の蒸散作用を促進して周辺環境の気温を下げる水となります。ロハスの花壇には、大気浄化機能や景観形成機能、人を癒す機能等の緑化が有する機能も付随します。
そのような多機能性を有したロハスの花壇を下水処理場に実装することが私の夢です。 - 第4回:私の夢PartⅡ ロハスのトイレの社会実装
- 震災や気象災害が頻発しているわが国では、インフラが寸断される非常時においても機能する持続可能な水洗トイレが求められています。そこで「ロハスの家」をお手本として、インフラから独立した「ロハスのトイレ」の開発に取り組んできました。
再生可能な動力でトイレ洗浄水を直ちにその場で浄化再生してトイレの洗浄水として繰り返し使用するシステムと組み合わせることで、水洗トイレは持続可能になります。
そのようなトイレ洗浄水再生システム(e6s)を製造して販売する大学発ベンチャー企業e6s(エシックス)を立ち上げました。e6sの社会実装により非常時のトイレ問題を解決することが私の第2の夢です。