立命館大学理工学部 環境都市工学科
教授 惣田 訓(そうだ さとし)様
- 第1回:私は
- 立命館大学理工学部環境都市工学科の惣田です。
1999年に大阪大学で博士号を取得し、ポスドク(博士研究員)、助手、准教授の後、2017年から立命館大学の現職です。
分解者である微生物を下水中の有機物除去に活用している活性汚泥法の講義を大学で受けた時、とても美しい工学だと思いました。
肉眼では見えない細菌や古細菌の構成するドメインが、多様な元素の代謝機能を有していることに驚きました。
それ以来、活性汚泥法、散水ろ床法、人工湿地、アナモックス、嫌気性消化法、浄化槽など、生物学的排水処理プロセスを研究しています。 - 第2回:水生ミミズを活用した余剰汚泥の少ない活性汚泥法
- 下水汚泥の処理・再資源化には、大規模集約が適しています。
一方、多くの中小規模の下水処理場では、汚泥発生量は、やはり少ないほうが良いでしょう。
活性汚泥の細菌により、下水中の有機物が分解され、その一部が細胞となることで余剰汚泥が発生します。
細菌は、ツリガネムシやワムシに捕食され、この食物連鎖が長いと、汚泥発生量は減少します。
そこで、和歌山県工業技術センターと共同して、水生ミミズを食物連鎖の上位者として活性汚泥に定着させ、余剰汚泥の少ない活性汚泥法を研究しています。
ラボ実験では、理論値の4~42%に汚泥収率を抑制できました。 - 第3回:合流式下水道越流水と平野川
- 合流式下水道の整備地域では、強降雨時には、下水が未処理のまま河川放流されます。
大阪市内を流れる平野川にも、合流式下水道の越流水が放流されており、それが一因となって悪臭やスカムが発生しています。
河川底質に堆積した有機物が嫌気分解され、バイオガスが発生しているようです。
大阪府の「寝屋川流域底質改善検討部会」と共同し、次世代シーケンサーで解析したところ、底質中の原核生物の10~15%がメタン生成古細菌でした。
平野川では、薬剤散布による底質改善事業も試行されており、微生物叢(多様な微生物の集合体)のモニタリングも、その効果の検証に有効です。 - 第4回:立命館大学における下水道分野の人材育成
- 私の所属する環境都市工学科は、1学年約170名であり、その多くが「水環境学」、「水処理工学」、「上下水道計画」等の科目を受講します。
「環境管理調査実習」では、滋賀県の湖南中部浄化センターで下水と処理水を採水し、BODとCODの測定、大腸菌の計数を学びます。
また、活性汚泥の酸素消費速度の測定も実習しています。
「下水道広報プラットフォーム(GKP)下水道を未来につなげる会」のみなさんにも、90分の特別講義を依頼しています。
本学OB・OGが将来の下水道分野を担うことを願っています。