千葉工業大学 情報変革科学部 情報工学科
教授 有本 泰子(ありもと よしこ)様
- 第1回:感情音声研究と下水道のコミュニケーション課題
- 私の研究は、人間の自然な感情表出である笑い声や叫び声の音響特性やその生成機構を解明し、自然かつ豊かな感情コミュニケーションのモデル化や感情を含んだ音声の合成・検出を目指しています。
このアプローチは一見下水道とは離れているように見えますが、施設管理や緊急対応の現場では、作業員同士の声や音声による合図、危険を知らせる音の伝達が極めて重要です。音声によるヒューマンインタフェースを高度化する研究は、騒音や音響環境が厳しい下水道空間での安全・連絡の向上に貢献します。 - 第2回:笑い声や叫び声を研究する時の悩み
- 皆さんは、笑い声や叫び声と聞くとどういう音声を思い浮かべますか? 声優さんや俳優さんが演じるアニメやドラマのキャラクターが面白いことに対して大声で笑ったり、危機的な出来事に直面して鋭く叫ぶ場面を思い浮かべるのでは?
しかし、普段の会話では、皆さんが思い浮かべるような笑い声や叫び声を我々は出しません。どんな人とどんな会話をしているかによりますが、ほとんど声になっていない「フッ」というような笑いや、囁き声で叫んでいたりもします。皆さんは、こうした普段の笑い声や叫び声だけを聞いて、これが笑い声であるとか叫び声であると認識できますか? - 第3回:いつ笑い出すのでしょう?
- 笑い声は「ハハハ」や「フフフ」などのように発話内容を伴わない笑いだけでなく、何かを話しながら笑っていることもあります。こういう笑いながらの喋り声は、最初は笑っていない喋り声で、喋っている途中から笑い出すこともあります。では、いつ笑いだすのでしょう?喋りながらの笑い声の発話内容を、音声の最小単位である音素に分割して調べたところ、/i/、/t/、/s/、/d/の音を発声する時に笑い出しやすいことが分かりました。これらの音素は口腔内の前方を入で狭めて発声する音です。笑い始めに何か規則がありそうです。
- 第4回:実環境におけるリアルな感情表出を対象とした学術研究
- 下水道管内や施設内では、機械音や環境ノイズが多く、異常音や人的危険サインを即座に捉えることが難しいという課題があります。第2回で紹介した声にならないフッという笑い声や囁き声による叫び声などは、まさにノイズにかき消されてしまいます。機械音や環境ノイズに強い検出モデルを構築するためには、我々が普段暮らしている環境の中で収録した音声を研究対象とする必要があります。高精度な音声検出技術は、巡視ロボットや監視システムに実装することで、異常時の迅速な検知・通報、作業者の安全確保に役立つ可能性があります。

