日本大学生産工学部環境安全工学科
准教授 永村 景子(ながむら けいこ)様
- 第1回:”花のパリ”女子大生旅の締め
- 日本大学の永村景子です。専門は景観や土木遺産、公共事業に関わる市民参画などです。私の研究を兼ねた趣味は「素敵な風景探しの旅」なのですが、忘れられない記憶は、大学4年のフランス研究旅行に遡ります。
セーヌ川クルーズ中も橋桁ばかり激写していた私に、最終日、恩師が放った言葉は「下水道博物館に行ってこい」という強引な指令。薄暗い地下を1人で巡り帰国しましたが、数年後、他のメンバーがフランスを訪れた際は「おしゃれなカフェやスイーツを堪能していた」と聞き、女子大生のパリ旅行との格差に愕然としたのは良い思い出です。 - 第2回:”サボ”に導かれた風景探しの旅
- 帰省ついでに訪れた門司の九州鉄道博物館で、展示車両に懐かしい文字「肥後小国」を目にしました。大学生時代の卒業研究テーマが、まさに肥後小国駅〜豊後森駅を走った旧国鉄宮原線のコンクリートアーチ橋7橋でした。資材不足を背景に、標準設計で全国的に同様の無筋コンクリートアーチ橋が建設されましたが、熊本県小国町では「竹筋橋伝説」も囁かれていました。かつて地域を支えた鉄道は廃線となり、橋梁群は竹藪の中に埋もれましたが、平成の地域おこしを契機に、人々の暮らしの記憶と繋がり、地域のアイデンティティを象徴する風景の一部として、第二の人生を送っています。
- 第3回:“へぇ~”と“ほぉ~”から始まるまちづくり
- 10年以上前に宮崎県日南市油津の皆さんと発案した「へぇ~ほぉ~まちあるき」。いわゆるガイドツアーではなく、道案内をする「案内人」と、地域の歴史や生業の記憶を語る「請負人」が主役で、今なお続いています。地元の古老が語るまちの記憶、元漁師が日南弁で熱弁する鮪との壮絶な戦い、さらには歌って踊って地域の魅力を教えてくれる小学生まで。様々な「請負人」が語る物語に、思わず口にする「へぇ~!」「ほぉ~!」が響き合ったときの一体感は、何とも言えません。まち風景が、「地域の宝物」ではなく「自分たちの宝物」へと成長した瞬間だと、私は考えています。
- 第4回:風景を継ぐ「はしわたし」
- かつて私を無理やりパリの下水道博物館へ送り込んだ恩師のように、今は私が学生たちとともに、現場を歩む毎日です。現場では”時空物人生”で風景を見つけ出す「特異点探索」を大切にしています。眺めだけでなく、自らの五感でその場所特有の地形や歴史・暮らしの有り様を探り当てる。大学という立場から、行政と市民、技術と暮らしを結ぶ「触媒」でありたいと考えています。下水道という見えないインフラも、こうした物語の翻訳を通じて、地上の風景や人々の誇りと繋げることができるはず。産学官の「はしわたし」として、次世代に継ぎたい風景を探していきたいと思います。

